井の頭恩賜公園のあゆみ|27話 |江戸時代の絵図は、桜?梅?

『いのきちさん27号 2016年3・4月号』 連載《井の頭恩賜公園のあゆみ 27話》

第9話(2013年3・4月号)でご紹介したこの絵、覚えている方もいらっしゃることでしょう。

今回もう一度取り上げることにしたのは、「この花、桜じゃなくて梅じゃない?」という疑問が編集会議で出ていたからです。
専門家から「なるほど」のご回答を頂いたので、みなさまにもお伝えします!

斜面に描かれた花々は、桜か?梅か?

「桜じゃなくて梅じゃない?」という編集委員の一人から出された疑問。植物の視点からの2つの指摘でした。

①花が赤と白の二色で描かれていること。
②山桜なら花と葉が同時に出るのに、葉は描かれず、花のみが描かれていること。

そう言われると「梅かな?」と思えてきますよね。
この疑問にお答えいただいたのは、絵を所蔵する府中郷土の森博物館で長年学芸員を務め、副館長(2018年4月現在:館長)でもある小野一之さんです。

「赤白二色、花と葉のことはともかく、私は桜でいいと思います。理由は、

①「井の頭・小金井・六社」のセットは、明らかに江戸市民の小旅行のお決まりコースなので、同時期に旅した折のスケッチと思われること
②その旅の日付がこの画帳に記されている「安政3年3月16日」で、これは新暦に直すと4月で、桜の季節となること
③もし「小金井・六社=桜」で、「井の頭=梅」なら、同時期の自分のスケッチではなく、それぞれの名所絵などを模写したであろうと考えられるが、そのベースとなる絵が見当たらないこと。しかも「小金井=桜」に対応するように、井の頭が梅の名所とは知られていないこと

④「六社」の絵で花が咲いている樹の場所は、他の『江戸名所図会』の挿画でも桜らしき樹が確認でき、現在もここに桜の樹がある。つまり、「小金井」はもちろん「六社」も桜で間違いないので、「井の頭」も桜と考えるのが自然であること」

……なるほどガッテン!です。

ちなみにこの画帳は府中市内のお宅で見つかって寄贈されたとのこと。どんな方の筆によるのかも、知りたくなりますね。

※『小金井府中六社井の頭弁天画帖』の『井の頭』の絵図は、府中郷土の森博物館の許可を得て掲載しています。作者不明。安政三丙辰年(1856)「三月十六日」の日付があります。

※『いのきちさん』は株式会社文伸さんが2011年11・12月号から2017年11・12月号まで、井の頭恩賜公園100周年カウントダウン新聞として発行していたフリーペーパーです。井の頭公園の歴史について合同会社いとへんの安田知代が寄稿した記事を、こちらのブログに掲載しています。

安田 知代

安田 知代合同会社いとへん 共同代表

投稿者の過去記事

長年、フリーの編集者・ライターとして活動後、2012年から仲間とともに合同会社いとへんを運営。著書『井の頭公園*まるごとガイドブック』(2008年ぶんしん出版)、『懐かしの吉祥寺 昭和29・40年』(20011年ぶんしん出版)など。郷土史の小ネタを調べるのが大好き。目下、多摩の山々の歴史を探索中。2015年末に原田病を発症し、ステロイド投薬による免疫力の低い身体と仲良くする方法を模索する日々を過ごしている。

アーカイブ

これまでの仕事

PAGE TOP