ほっとひと息、井の頭散歩|⑦井の頭の桜

月刊『ほっとメーッセージ 2016年4月号』 連載《ほっとひと息、井の頭散歩 EPISODE7》

若々しい美しさとエネルギーが満ちる桜の季節ですね。井の頭公園の見所は、池の周囲をはじめ園内に点在します。気ままに散策してみていただきたいです!

いよいよ桜の季節。
井の頭と桜の歴史を、ふわっと紐解いてみましょう。

井の頭池の南西の畔に、弁天堂があります。井の頭公園を象徴する風景として、池を前景に朱塗りの御堂を望む写真が紹介されることが多いので、実際に訪れたことのない方でも、どこかで一度は見たことがあるのではないでしょうか?

現在の弁天堂は、大正13(1924)年に火災で焼失した後に、昭和2(1927)年に再建された御堂です。かつての御堂は、寛永13(1636 )年に徳川家光が建てたと伝えられます。
今は周囲の公園と一体化し、その一部のように感じられる弁天堂ですが、大正6(1917)年の開園よりもずっと昔から存在する由緒ある場所なのです。大盛寺の記録『神田御上水源井之頭弁財天略縁起』には、寛永八年の旱魃(かんばつ)の水加持祈祷でご利益があったため、家光が宮社を建て、境内に百本の桜を植えたと記されています。

上にご紹介した絵は、府中郷土の森博物館所蔵の『小金井府中六社井の頭弁天画帖』の三連作の一枚、『井の頭』です(作者不明。安政三丙辰年(1856)「三月十六日」の日付)。弁天堂の南側正面に位置する斜面に、花盛りの桜が点々と描かれています。
桜といえば、幕末から明治にかけて人工的に開発されて広まった染井吉野が現在は主流になっていますが、家光が植えたのは山桜の種類だったと推測されます。その寿命は150〜200年なので、ここに描かれている桜は、家光の時代に植えられたものだったかもしれません。

毎年4月、家光の水加持祈祷以来続く伝統的な「大祭」が行われます。何人もの僧侶が集まり、堂内の炉に火をくべ、香木などの供物を投げ入れながらお経を読む荘厳な護摩供養。こちらも一度ぜひ訪れてみていただきたい見所です。

 

※月刊『ほっとメーッセージ』は株式会社プロ・アクティブさんが毎月発行している情報誌です。2015年10月号から2016年9月号まで、合同会社いとへんの安田知代が井の頭公園について寄稿した記事を、こちらのブログに掲載しています。

※『小金井府中六社井の頭弁天画帖』の『井の頭』の絵図は、府中郷土の森博物館の許可を得て掲載しています。

安田 知代

安田 知代合同会社いとへん 共同代表

投稿者の過去記事

長年、フリーの編集者・ライターとして活動後、2012年から仲間とともに合同会社いとへんを運営。著書『井の頭公園*まるごとガイドブック』(2008年ぶんしん出版)、『懐かしの吉祥寺 昭和29・40年』(20011年ぶんしん出版)など。郷土史の小ネタを調べるのが大好き。目下、多摩の山々の歴史を探索中。2015年末に原田病を発症し、ステロイド投薬による免疫力の低い身体と仲良くする方法を模索する日々を過ごしている。

アーカイブ

これまでの仕事

PAGE TOP