東京の森と暮らし|間伐材と皆伐材

東京の森の「間伐材」と「皆伐材」。
どっちが多い? 違いは何? その意味することは?

みなさんは、人工林での伐採方法に、「間伐(かんばつ)」「皆伐(かいばつ)」があることをご存知ですか?

「間伐」は、間引いて伐ること。

「皆伐」は、山の一部あるいは山ごと全部の木を一気に伐ってしまうことです。

では、東京の多摩地域の森では、「間伐」と「皆伐」、どちらが多いと思いますか?

東京都産業労働局のWEBサイト「統計データ 東京の森林・林業」のデータから、それが分かる部分を抜き出してみました。

平成28年版 p25、27年度の「立木伐採面積及び材積」(材積単位=立法メートル)です。

ご覧の通り、圧倒的に「間伐」の材積が多いことがわかります。
「皆伐」の3倍強にも及びます(面積では13倍強!)。
ちなみに、「皆伐」の親カテゴリーとなっている「主伐」というのは、成熟した木を伐ることです。

さて、この量の差を見て、みなさんはどう思われたでしょうか?

「ほお、ちゃんと間伐が行われていて、森林の管理がされていて良いことだ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

間伐された木々、皆伐された木々、どこに行くのか?

では次に、こちらのデータをご覧ください。
先ほどと同じく、平成28年度版の「東京の森林・林業」p111からの引用です。

東京の森で伐られた木々の多くが集められ、競りにかけられる原木市場「多摩木材センター」のデータです。
その取扱量を赤線で囲ってみました。

平成27年度の数値が入っていないのですが、
22〜26年度は約1万6千〜1万7千㎥程度の横ばいだったことがわかりるので、同程度と仮定します。※取扱量の推移については、またの機会に。今回は、「間伐」と「皆伐」との関係に焦点を当てて見ていきます。

平成27年度に
間伐された木が約6万7千㎥
皆伐された木が約2万2千㎥

市場で売られた木が約1万7千㎥

この3つの数字は、東京の森林と木材利用の関係性を浮き彫りにしています。

市場に出ている木々は、皆伐材よりも少なく、間伐材よりずっとずっと少ない。

実は、市場に出ている木々、すなわち建材等として有効に活用されている木々のほとんどは、皆伐された木々です。
※皆伐された木々よりも市場の取扱量の方が少ないのは、「青梅貯木場」に回される木々もあるからです。「青梅貯木場」には細かったり曲がっていたりする木々が集められ、チップや針葉樹合板の材として別の流通で売られていきます。

では、皆伐の3倍以上に及ぶ間伐で伐られた木々は、どこに行ったのか?

冒頭の写真を、いまいちどご覧に入れます。

立木の根元に、横たわっている木々が見えます。
そうなんです、このように間伐された木々が、山に伐り捨てられているのです。

東京の森の「間伐」は、このような「伐り捨て間伐」がほとんどだというのが、現状です。

こちらは、「平成16年度 奥多摩町森林再生間伐事業」で間伐された森。
2015年11月に訪れたときの写真です。

奥に入ると、伐り捨て間伐された木々の枝が、苔むしていました。

どうして「伐り捨て間伐」が行われるのか?

伐採しても、運び出して売るのにはお金がかかる。
売っても、儲けが出ないどころか、経費が回収できない。

だから、東京都が「花粉発生源対策事業」や森林整備として、切り捨て間伐を進めているのです。

つまり、こういうことです。
かつて国の政策「拡大造林」として税金を使って植林したスギ・ヒノキを、今、私たちの税金を使って「伐り捨て」している。

胸がぎゅーっと苦しくなるような現状があります。

でも、伐り捨て間伐しなければ、山の荒れがさらに進む、土砂崩れのリスクが高くなる、大きな自然災害が起きやすくなる。スギ・ヒノキの花粉は、人の健康に大きな弊害をもたらしている。。。

人は、未来を見通すことができないまま自然にダメージを与え、自分たちの暮らしへのリスクを高めてしまい、何とかしようとあがいているのです。
悲しいことですが、それが現状です。

利用される木よりも「切り捨て」が多い現状が、今も続いている

同じく「東京の森林・林業」のデータから、平成23年度版から毎年の「皆伐」と「間伐」の材積(立法メートル)を抜き出してグラフにしてみました。

平成25年に、間伐がぐんと減り、皆伐が若干増えているのは、何が原因だったのでしょうか。機を見て、取材してみたいと思います。

いずれにしても、何らかの形で木材を利用している「皆伐」よりも、切り捨てられている「間伐」のほうが圧倒的に多い現実が続いています。

この現状も知ったうえで、選んでいただきたい。

私たちが東京の森の再生に貢献したいという思いを胸に、SMALL WOOD TOKYOを立ち上げた2012年、「間伐材」という単語を知る人は多くありませんでした。

でも5年経った今、
「健全な森を育てるためには間伐がたいせつ。だから、できるだけ間伐材を使いたい」と考える人が増えています。

「東京の森の木を使った木製品を販売している」と話すと、
「間伐材を利用しているんですね、素晴らしい!」とおっしゃる方も多くて、隔世の感にびっくりします。

でも、SMALL WOOD TOKYOの木製品の材は、皆伐された木です。
できることなら、私たちも間伐材を使いたい。
でも現状、それは叶わないのです。

それでも地域材を使うことの意義を感じて、「敷くだけフローリング」「もてもてキューブ」や「ヒノキの風呂フタ」を選んだいただけたらと願っています。

そして、この現状を知っていただきたくて、こんなブログを書きました。

※2017年11月に『SMALL WOOD TOKYO』のブログページに掲載した記事「東京の森の「間伐材」と「皆伐材」。 どっちが多い? 違いは何? その意味することは?」を再録しました。

安田 知代

安田 知代合同会社いとへん 共同代表

投稿者の過去記事

長年、フリーの編集者・ライターとして活動後、2012年から仲間とともに合同会社いとへんを運営。著書『井の頭公園*まるごとガイドブック』(2008年ぶんしん出版)、『懐かしの吉祥寺 昭和29・40年』(20011年ぶんしん出版)など。郷土史の小ネタを調べるのが大好き。目下、多摩の山々の歴史を探索中。2015年末に原田病を発症し、ステロイド投薬による免疫力の低い身体と仲良くする方法を模索する日々を過ごしている。

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